緑の畑を背景に、妊娠中のお腹にそっと手を添える女性のイメージ画像

ふたりの息子を自宅出産しました。

イギリスで働く、ある助産師さんの話

看護学生だった頃、授業でイギリスの自宅出産についての話を聞く機会がありました。

話してくださったのは、イギリスで働く日本人の助産師さんでした。イギリスでは自宅出産という選択肢が当たり前のようにあり、助産師が家庭で出産に寄り添い、赤ちゃんが生まれたら家の前に花飾りを置いて知らせるのだという話を聞いて、私は強く心を動かされました。

「絶対に自分は自宅で産みたい。」

その時に芽生えた思いを、今でもはっきり覚えています。

自宅以外の選択肢は「いや」だった

助産師としての経験はまだ2年しかなく、しかも病院の産婦人科病棟には、当時の私にとってトラウマとも言える記憶がありました。

当時、広島には分娩できる有床の助産院がなく、自分が選べる場所は、自宅以外にありませんでした。「病院で産む」という選択肢は、私にとって「いや」という気持ちしかなかったのです。

幸い、広島で唯一、出張専門で自宅出産を引き受けてくださる「れいこ助産院」の前原さんに連絡したところ、無事に分娩の予約をとることができました。

「安全は大丈夫?」への、私なりの答え

自宅出産と聞くと、「安全は大丈夫なの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

出産そのものは、そもそも人間のからだに備わった自然の営みです。赤ちゃんをからだに宿し、育み、母のからだから赤ちゃんが旅立ち、母のからだは回復しながら、赤ちゃんを育てるための母乳をつくる……当たり前のようですが、これは自分で考えてできることではありません。何も言わなくても、からだはあらゆる器官を総動員して、命を宿し、育て、自分も赤ちゃんも守っているのです。

助産師は、その生命の持つ力が正常に働くことができるように準備を整え、問題がないことを確認し、見守り、支え、問題があれば早期に対処して生命を守ることが職務です。

例えるなら、こういうことだと思います。

海で泳ぐことを、「おぼれるかもしれない」「事故にあうかもしれない」と言って、すべて管理するために時間も場所も限定し、「泳ぐのはしんどいことだ、危険なことだ」と、泳ぎを教えずボードに乗せて船で引くだけにしたら、どうでしょうか。それで安全が確保される人もいるでしょう。でも、ボートで、船で、事故が起こることもあるのです。そして海を楽しむ人は減り続けることでしょう。

私たちは、海で泳ぐ力をもともと持っています。その力が発揮され、危険は回避しながらも、海を泳ぐことができるように見守るガイドのような存在。それが、助産師と言えるかもしれません。

前原助産師さんという、信頼できる存在

私の出産を担当してくださった「れいこ助産院」の前原助産師さんは、とても誠実な方です。決して自分のために労力を惜しんだり、いい加減に対応されることがない。責任を持ってくださることを信じられたからこそ、私たち家族は自宅出産を選んだのです。

元気に出産を迎えられるように、自分自身でもからだを整え、家族で迎える準備をし、いろんな状況を想定しながら、妊婦健診で丁寧に指導していただきました。決して「楽々に何もしなくていい」わけではありません。だからこそ、出産の主人公が私と家族であったという経験は、喜びあふれる宝物になりました。

顔見知りで、信頼できて、私のことを知っていてくださっている助産師さんたちに、黒子のようなサポートで伴走してもらえる。感謝しかない、とても贅沢な経験でした。

ふたりの自宅出産が、私にくれたもの

安心して、温かいと感じられる環境の中、万全の準備をして、新しい家族を迎える。

私は自宅出産を2回経験して、「自分も助産師として生きていきたい」という想いがとても強くなりました。この経験が、後の「10年ブランクを経ての復帰」という道を、静かに引き寄せてくれることになります。

私自身は、今、自宅出産をサポートできる環境に身を置いているわけではありません。それでも、あの2回の温かい助産体験は、これまでも、そしてこれからも、私の助産師としての指針であり続けています。

(続く)

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